自動車を所有していると、毎年支払わなければならないのが「自動車税」。
自動車税は、車の排気量に応じて納税額が決まる課税方式です。
しかし近年、
- 電気自動車
- ハイブリットカー
の普及や、カーシェアリングを利用する人が増えたことにより、税収が減りつつあります。
そこで政府が導入を検討しはじめたのが「走行距離課税」という新たな課税方式。
走行距離課税は、走った距離に応じて課税するという、従来とは全く異なった方式となっています。
今回は、そんな走行距離課税が検討されるようになった背景や、走行距離課税が導入された場合に損する人・得する人はどんな人なのか、詳しく解説していきます。
走行距離課税とは?
走行距離課税とは、その名の通り
自動車が走行した距離に応じて課税額を決める
という制度です。
2018年頃から政府与党内で検討が始まりました。
走行距離課税が導入されると、これまではエコカー優遇制度によって減税・免税の対象だった
- 電気自動車
- プラグインハイブリット車
などの自動車にも、ガソリン車と同じ税率がかかることになります。
走行距離課税が検討されている背景
政府与党によって走行距離課税が立案されたのは、2018年11月。
現在の自動車税制度は、1950年に創設されたものが継続施行されています。
途中、税率の変化やエコカー減税の導入はありましたが、基本となる排気量による算出方法が見直されたことはありませんでした。
つまり、半世紀以上変わらない税制が敷かれていたということです。
近年は、
- 若者を中心とした自動車離れ
- カーシェアリングの普及による自動車保有者の減少
- ハイブリット車の増加
- 電気自動車の普及
といった理由から、自動車税の税収が激減しています。
2022年と2007年の税収を比較すると、なんと1.7兆円もの減収。
そんな減収の打開策として、政府が考案したのが走行距離課税なんです。
世界の「走行距離課税」事情
日本での導入が議論されるようになった走行距離課税ですが、世界ではすでに導入されている国があります。
アメリカでは、一部の州で走行距離課税が導入されています。
また、ドイツでは12トン以上の大型トラックに限り、走行距離課税が導入されています。
いずれの国も、ハイブリット車や電気自動車が普及したことにより、ガソリン税の税収不足が顕著になったのが原因。
不足する税収を補う目的で、車体の重量と走行距離によって税額を決める「走行距離課税」が導入されてきました。
走行距離課税が導入されたら損する人
地方在住者
通勤や買い物など、日常生活で自動車を利用する頻度が高い人にとっては、これまで以上に税負担が高くなる可能性があります。
特に地方エリアに住む人にとって、自動車は生活必需品。
日常生活での自動車依存度が高いほど、今まで以上の税負担がのしかかるでしょう。
交通・運送業界
走行距離が長い交通業界や運送業界にとって、走行距離課税導入は大きなダメージとなります。
特に、何十台もの車を所有している
- タクシー会社
- バス会社
- トラック運送会社
の負担は、相当なものになることが予想されます。
実際に走行距離課税が導入された場合、税負担分を補うために運賃が値上げされる可能性は十分考えられます。
エコカー優遇制度を受けている人
現在の税制度では、ガソリン車の場合排気量に応じて税金がかかります。
電気自動車の場合、排気量は0cc。
そのためエコカー優遇制度により、電気自動車はPHV車は免税あるいは減税となっています。
今後、走行距離課税が導入されることになれば、電気自動車やPHV車にもガソリン車同等の税金が課せられることになります。
走行距離把握システムの導入負担
走行距離に応じた課税を実現させるためには、車の正確な走行距離を把握する必要があります。
アメリカやドイツでは、GPSを搭載した車載器による測定方法が採用されています。
仮に日本で、すべての自動車に車載器を搭載するとなると、莫大な費用がかかることは明白。
- 車載器本体の購入
- 車載器の取り付け工賃
- 日々の通信費
など、個人負担を強いるのは現実的ではありません。
走行距離把握システムが実際に導入されるとなると、費用の一部は税金で負担することになるのかもしれません。
走行距離課税が導入されたら得する人
車に乗る機会が少ない人
走行距離課税は、自動車で走行した距離に応じて税額が決まる制度です。
つまり、走行距離が短ければ税金が安くなるということ。
週末にしか自動車に乗らない人は、これまで支払ってきた自動車税より税額が安くなる可能性はあります。
排気量の大きな車に乗っている人
現在の自動車税制度では、排気量が大きければ大きいほど税額が高く設定されています。
走行距離課税制度が導入されると、排気量別課税は撤廃されることになっているため、減税となる可能性があります。
さいごに
2018年11月から検討が始まった走行距離課税ですが、導入については未だ未定です。
導入には多くの問題や課題が残っているため、政府としては世論を見ながら慎重に検討を進めているといったところでしょうか。
今後の議論に注目が集まりそうです。
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